近年、日本では空前の「サウナブーム」が巻き起こっています。
従来は中高年の男性が銭湯や健康ランドで汗を流す場所としてのイメージが強かったサウナですが、現在では若者や女性を中心に、新しいスタイルの“ととのう”文化が広まり、サウナは一大カルチャーとして社会現象となっています。
目次
サウナブームの背景は?
このブームの背景にはいくつかの要因があります。まず一つは、2010年代後半から登場した「サウナ―」と呼ばれる熱狂的なサウナ愛好家の存在です。
彼らはSNSを通じて自身のサウナ体験を共有し、その効果や楽しみ方、施設情報を発信しました。特にTwitterやInstagramでは「#サウナ」「#ととのった」などのハッシュタグが人気となり、多くの若者の目に触れることで興味を喚起しました。
さらに、2019年に放送されたドラマ『サ道』(主演:原田泰造)もブームの火付け役の一つです。
この作品はサウナ初心者の視点から、各地の魅力的なサウナ施設を紹介し、視聴者に“ととのう”体験への憧れを抱かせました。
また、YouTubeでも「マグ万平」氏や「PrimalBlue」などの人気サウナ系チャンネルが注目を集め、視覚と音で“ととのう”感覚を疑似体験できるコンテンツが多く登場しました。
「ととのう」という感覚
日本独自のサウナ文化を象徴するキーワードが「ととのう」です。これはサウナ→水風呂→外気浴という一連の流れの中で訪れる、心身の深いリラックス状態を指す言葉です。
心拍数が落ち着き、頭がすっきりとクリアになり、幸福感に包まれるような感覚とされており、多くのサウナ愛好家がこの「ととのい」を求めて施設に通っています。
この「ととのう」という言葉が市民権を得たことで、サウナは単なる入浴や健康管理の場ではなく、「体験型ウェルネス」へと進化しました。
多様化するサウナ施設
サウナブームとともに、全国に新しいタイプのサウナ施設が次々と登場しています。たとえば、スタイリッシュな内装の「ソロサウナ」、カップルやグループで貸し切れる「プライベートサウナ」、フィンランド式の本格ロウリュが楽しめる「アウトドアサウナ」、自然の中に設けられた「テントサウナ」などです。
また、女性専用サウナや、仕事帰りに立ち寄れる都会型のサウナ付きコワーキングスペースも増えており、ライフスタイルに合わせた選択肢が広がっています。
飲食や音楽と組み合わせた“サウナイベント”や、アウフグース(熱波師による熱風サービス)といった新たなエンタメ要素も人気です。
コロナ禍とサウナ
2020年以降のコロナ禍では、多くの人がストレスや疲労を感じる中、サウナは「密を避けつつ心身を整える場所」として再注目されました。
個室サウナや貸切サウナの人気が高まり、“自分だけの空間で整う”という新しい価値観が生まれました。また、地方へのワーケーション需要と連動して、観光地にあるサウナ宿泊施設や「サウナ旅」も増加しました。
サウナと日本文化の融合
近年では、サウナと日本の伝統文化の融合も進んでいます。
たとえば、和風建築の中に設置されたサウナ、茶道のように精神を整える「瞑想系サウナ」、そして禅の思想を取り入れた空間設計など、日本人の美意識や哲学が反映された“ジャパニーズ・サウナ”が国内外から注目を集めています。
さらに、地方創生の一環として地域資源を活かしたご当地サウナも増えており、木材や水、景観といった自然との調和が強く意識されています。
今後の展望
日本のサウナブームは一過性の流行ではなく、文化として根付きつつあります。
心と身体の健康を同時に整える手段として、サウナは今後もさらに進化していくでしょう。
ウェルネス、観光、地域振興、そして働き方改革とも結びつきながら、サウナは日本人の生活の中に新しい価値を生み出していくと考えられます。
最後に、「サウナはただの温浴施設ではない」。
それは自分と向き合い、心をリセットするための“現代の禅空間”とも言える存在です。今後もその広がりと深化から目が離せません。
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